沼田剣桜会道場の稽古

沼田剣桜会道場の稽古

 沼田剣桜会道場では,田原館長のもと,
剣道の理合を追求した指導,稽古
が行われています。
その一端をご紹介しましょう。


【 ご注意 】
ここで紹介する内容は,田原館長の指導を筆者が解釈して記載しているため,
館長の意図するところと異なっているかも知れません。


打突の機会を逃さないために
 打突の機会には,「許さぬところ」として<起こりがしら><受け止めたところ><技の尽きたところ>と言われますが,激しい動きの中で瞬間的に訪れる「機会」を確実に打突することは簡単ではありません。
 そのために,基本の足さばき,竹刀さばきが重要になってきます。足から竹刀まで,体の各部位を正確に使うことで,理想的な一拍子の打突が完成します。

 剣桜会道場では,剣道の理合を追求した基本重視の指導が行われています。


竹刀さばき
竹刀は構えた所から下に打つ。
 初心者の稽古では「大きく振りかぶる素振り」を教わりますが,そのままの打突では竹刀を振り上げて,振り下ろす。「二拍子」の打ちになってしまいます。
 基本稽古でも大きく打つ技を稽古しますが,これらは体を作るための稽古であって,試合で使う技には,さらにその先の技術が必要となります。では,一拍子の打突はどうやって打つか。

 それには,肘の使い方が重要になります。肘の曲げ伸ばしで竹刀を操作する。
 中段の構えから面に行く場合をイメージして下さい。
 両肘を軽く曲げた状態から,左手を先導して面の方向に突き出すことで,一直線の打突が可能となります。竹刀をもち上げる動作は必要ありません。小手の場合も同じです。

 肘を柔らかく使って竹刀を操作することが,理合いにあった素早い竹刀さばきに直結しているようです。道場では,切り返しや跳躍素振りの際に肘の曲げ伸ばしを中心に指導しています。


足さばき

試合の一本には「気・剣・体」の一致が必要です。
 竹刀がどんなに速くても,足が止まっていれば一本にはなりません。ですから,試合運びの中で,技のスピードとは足のスピードでもあるわけです。
 一瞬の打突の機会に,確実に前に出られる。踏み込みができる体勢を維持している事が重要です。簡単にいえば,左足で立って右足が浮いている状態です。

 大概の人は右足が利き足になっているため,無意識な状態では右足で立ってしまいます。この状態で打とうと思っても,一旦足を左に踏み替えて,それから跳躍することになるため,二倍の時間がかかってしまいます。
 試合中の激しい動きの中でも,左足を軸とした足さばきができるようにすることで,一拍子の打突が可能になります。

 とっさの動きでは,どうしても下半身の動きが遅れがちになりますので,日常の稽古の中でも足さばきは特に重要な指導事項になります。


呼吸法

もうひとつ重要なことに呼吸があります。
 竹刀さばき,足さばきが出来ていても,息を吸っている最中に打てるものではありません。声を出しながら,息を長く使って試合することが重要です。
 
 簡単なようでも,指導で直すことが難しい難題です。



理想の動きを身につけるために

基本は土台のようなもの。
 少年剣道でも,現役選手も,生涯スポーツとしても基本は大事なものです。基本を基本として学ぶだけでなく,稽古,試合の中で基本を磨く。実戦の技,応用の技も基本動作の集合体なので,実戦,基本をバランス良く稽古することで生きた技が身に着くことになります。
 続いては,剣桜会の稽古を順にご紹介しましょう。


其の一 基本動作(面を着けない稽古)
初級・中級が参加する稽古では,基本動作の稽古だけでみっちり一時間以上。重要なのは足さばきと竹刀操作。
体操・素振り
一般的に行われている稽古と変わりありません。
足さばきの稽古
すり足,踏み込み足,足さばきの八挙動,十六挙動,足さばきからの面打ち。特に左足の踏みつけと竹刀の握り方,肘の使い方を中心に指導されています。
二人ひと組での稽古
竹刀を使っての打突の稽古。面打ち,小手打ち,面・面,面・面・小手,面から振り返って面,面から振り返って胴,など。防具をつけてからの動きの基本になる,足の使い方,肘・手の使い方等,体の各部の動きが確認・指導されています。
跳躍素振り
通年ではありませんが,体を作る時期には跳躍素振り(500本〜1000本)が入ります。跳躍素振りは二種類,通常の跳躍素振りと,足を交互に交差させる跳躍素振り。ここで重点的に指導されるのは,肘の屈伸を使って竹刀を振ることですが,1000本振るには肘をうまく使わないと相当厳しいです。
其の二 基本技の稽古
面をつけてからは,基本の打突と体さばきを中心とした稽古です。
切り返しから基本技の稽古
一般的に行われている稽古と変わりありません。
基本の打ち込み稽古
基本稽古の中で行われる打ち込みをご紹介します。
稽古は,元立ちを立てた打ち込みです。打突の技は次の順となります。
「面」・「小手」・「胴」・「小手・面」・「小手・胴」・「面・体当たり」・「引き面」・「面」
この稽古には,剣道で使われる全ての基本が含まれています。 基本の動作を動きの中で身につける稽古です。
 
太鼓による稽古
太鼓に合わせて,間合いを詰め,相手の動きに応じて技を繰り出す稽古。 攻めからの打突,動きの中で,打突の機会を確実打てるように,足さばきを中心に指導しています。
其の三 試合稽古,地稽古
実戦で基本の打突と体さばきができるか。基本の技を使いこなすための稽古です。
技を固定した試合稽古
片側(懸り手)が「面・小手」,もう一方(応じ手)を「応じ技」に限定した試合稽古。 この稽古で,自分本位の試合運びから,相手に応じた試合運びへの脱皮を狙っています。
 試合の動きの中で,いつでも,どこからでも打てる。 円を切らない動作ができる。 そのためには,左足の踏みつけと,肘の使い方が重要になってきます。 この稽古で,基本稽古の習得技術のチェックができます。
大人との地稽古
子供同士の稽古では身に付かないもの。 プレッシャーに対する度胸を身につけるために地稽古は重要です。 子供同士の稽古では,前に,前に出られる子でも,大きい大人との稽古では怖気づいて前に出られないことがよくあります。 そんな子は,試合でもきっと同じ。 
 プレッシャーの中でも,自分を失わずに実力が出せるよう。 大人との地稽古は重要なのだそうです。おかげ様でうちの子たちは「地がある」と評価して頂くことが多いようです。
懸り稽古と打ち込み稽古
懸り稽古」と「打ち込み稽古」混同している子供も多いのですが,目的が違うので目的にあった指導を行うことが大切です。
 打ち込み稽古は,一本取るつもりで行う稽古で残心までしっかりとらせます。一方,懸り稽古は「打ったところから,構えなおさず,そこから打つ」稽古です。どこからでも,いつでも打てるように体を錬る稽古ですね。 元立ちもただ打たせるのではなく,試合で狙うポイントを次々に作ってやることが大切です。 元立ちも子供以上に素早く動き必要があり,相当大変です。


まとめ

 こうやって剣桜会道場の稽古をご紹介してみましたが,おそらく特別なものはなかったのではないでしょうか。 でも,同じ稽古を,稽古の意味を,一つの技を構成する体の各部の動きを的確に指摘し,修正を指導してゆく。 これが田原館長の指導力です。

 剣道の技は瞬間的なものですから,理論的な解釈・解説はなかなか難しく,感覚的な指導になってしまうことが多いと思います。剣道の指南書を読んでもイマイチ理解出来ない解説も多いと思います。 子供たちへの田原館長の指導は,そのまま指導者への指導でもあるのです。
 沼田剣桜会道場の先生方が,子供達との稽古の中で六段,七段を取得されているのがその証拠でもあります。 (記事 T)


 
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